物流ニッポン 連載記事「人財育成・定着◆実践セミナー⑯ コーチング 観察、褒め上手の1歩」 |
人間は社会的な生き物ですので、自分に対する相手の対応によって心理状態や行動が変化します。 たとえば、誰でも人から褒められると嬉しくなり、 元気が出ますし、仕事のモチベーションも上がります。 それによって人間関係がよくなれば、チーム力も向上します。 ですから、リーダーは“褒め上手”であることが大切です。 また一方、リーダーにとって部下の“叱り方”も重要なテーマで、 きちんと叱ることは、部下の能力を飛躍的に高める大きなポイントとなります。 ■“褒め上手”になろう! ひと口に“褒める”といっても、何でもかんでも褒めればいいというものではありません。 相手が納得できるような的を射た褒め方が重要で、決して“おだて”であってはならないのです。 「事実ではない」、「意味のない」、「誇張した」など、 相手の機嫌をとるような褒め方をするとどうなるでしょうか。 ①勘違いを招く ②返って相手の心を傷つける ③意欲を下げる ④反感を持たれる― 等の結果を招きます。 これによって部下からは、「リーダーは自分のことをきちんと見てくれていない」 と受けとめられ、下手なおだてやお世辞は、部下の意欲もチーム力も大きく低下させてしまいます。 “褒め上手”になるには、第一に日頃から部下をよく観察することがポイントです。 部下の言動をつぶさに捉え、細かく具体的に褒めなければ、 褒める効果をなくしてしまいます。また、褒めるタイミングも大切で、 機を逸すると「思いつき”で褒めてくれただけ」と受けとめられかねません。 そしてさらに大切なのが、「心をこめて褒める」という点です。 そもそも褒めるということは、自分にとっても相手にとっても 嬉しいことなのですから、思いを共有できるように顔の表情や声に 感情をこめて伝えることが大切です。 ■部下のミスの叱り方のポイント 部下を育てるためには、褒めるだけではなく叱ることも必要です。 しかし、この“叱る”という行為は意外に難しく、時として叱るのではなく、 “怒る”といった形に表れてしまうことがあります。 “怒る”というのは、自分の感情に支配された状態であり、 「怒」という漢字が示すように、「心が奴隷」になっているのです。 一方の“叱る”は、「正しい」もしくは「上手くいっている」状態が、 部下の頭の中に描かれるように伝えることですので、両者は明らかに違うことが分かります。 したがって、叱ることは相手の成長を考えた、リーダーとして 避けては通れない問題に他ならないのですが、実際には、 部下を叱ることに大きな抵抗を感じているリーダーも少なくないようです。 なぜ、堂々と叱ったり注意したりできないのでしょうか。 「部下から恨まれるから」「職場の雰囲気が悪くなるから」 と思っている人も多いようです。ですが、いい加減に済ませるよりも、 いうべきことはきちんといい、適切な対応をとらなければ、 メンバーの心情は悪くなり、職場全体の気風を悪化させてしまいます。 叱り方にもポイントがあります。 その第1は、ミスは誰にでもあり、意図的に起こすわけではありません。 本人は十分に分かっており、反省しているにもかかわらず、 いちいち目くじらを立てていたら、誰だっていい気分はしません。 そこで、『どんなミスを然り、どんなミスを許容するか』という線引きを明確にします。 第2に、部下のミスに対し、「仕事能力の欠如」と指摘してはいけません。 たとえ同じ過ちを繰り返す場合であっても、それは緊張感や向上心の不足が 原因と考えられますので、これは「修正能力の欠如」と伝えるべきです。 単なる表現の違いのように思われるかも知れませんが、 修正能力の問題だといわれれば、仮に2度目の失敗を叱責されても、 それは自分が悪かったのだと割り切ることができるからです。 叱り方のポイントは、部下(叱られる側)の心理をいかにコントロールするかにあるといえるでしょう。
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