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物流新時代掲載 2025年10月20日(月)「佐川急便が農業物流に進出」担い手減少、高齢化など課題多い中 (清水コメント) |
●佐川急便が「農業物流」に取組もうとしている。農作業を運ぶだけのとどまらず、選別や出荷などの 業務を行い、農業従事者をサポートしている。同社は以前から個別に農業従事者への支援を行ってきたが、 ことし4月より「SAGAWA農業物流サポート」と題して全国的に取り組みをスタートさせた。 ●「10年経たない内に35%減少」 農林水産省の統計によると、基幹的農業従事者(普段仕事として自営農業に従事している者)の数は、2024年に111.4万人。 2015年には、175,7万人を記録しているため、10年経たない内に35%以上減少している。 ●高齢化も深刻な問題で、2024年のデータでは、農業従事者の平均年齢は、69.2歳で、さらに65歳以上の割合は 71.7%と、実に7割強の担い手が高齢者だ。農業がそのような背景の中、佐川急便が農業物流に力を入れている。 ●同社の農業サポートの事例としては、以前はJA(農協)が育苗場で苗をトラックに積み込んで、納屋(倉庫)に一括納品し、 それを農家の方が田んぼに自ら配置していた。 ●それを佐川急便は、トラックで苗を育苗場で積み込んで、田んぼの指定位置まで輸送し、苗を配置するというサービスを実施。 ●農業従事者は、本業の農作業に集中できるようになった。 ●シャインマスカット農家へのサポートとしては、佐川急便の営業所内で梱包・出荷作業を行い、人手不足を解消させた。 スタート時には1シーズンで500箱に満たなかった取扱量が年々増加し、2024年末の時点では15万箱を超えるまで 拡大している。 ●また、球根の良品・不良品の選別作業において二重で検品が行われていたのを、佐川急便で出荷場と人員を用意して 選別作業を行い、二重の検品をなくし、出荷までの作業を請け負うことで球根の配送リードタイムを短縮させている。 ●「『作る』ことに専念できる環境整えたい」 ●農業物流への取り組みを行う背景について、佐川急便の担当者は、「地域社会への貢献だけでなく、一次産業全体の課題解決 に寄与できると考え、当分野に参入した。 ●物流サービスを提供することで、生産者様が『作る』ことに専念できる環境を整えたい。生産活動に集中できる環境が 整うことで、販路の拡大などもつながればと考えている」と話している。 ★【清水コメント】農業と物流の関りについて物流コンサル会社・ロジクエスト(株)の清水一成氏は、 「農業の物流は待ったなしの状況。小さい、地方の農家は、特に困っている。現在は、北海道や 九州などの地方から、1000㎞以上の長距離輸送が多いが、2024年問題もあって、それが難しく なってきている」と問題を提起。 ●また、「農産物は品目ごとに形状のばらつきも大きく、手積み・手卸ろしも多い。それも農家の負担に なっている。パレット積みにして、作業効率向上を図らなければならない。 総じて、『良いものを作る』だけでなく、『どう運ぶか』を考えた農産物流設計が必要」と語った。
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